シカゴ・Electrical Audioにて、巨匠Steve Albiniとの共同作業を経て作り上げられたCRYAMY 2nd full album。
マスタリングはBob Westonの手によって行われた。
全編アナログテープ一発録り、オーバーダビングなしで制作は行われた。
ジャケットはMayumi Hosokuraによる写真があしらわれている。
生々しくリアルでありながら、どこまでもヘビーで硬質なサウンドで彩られた今作は、
その楽曲が表現する世界観や伝えようと歌われる事柄のせいか、非常に重厚で深刻なカラーを持っており、
これまでも、これからも、CRYAMYのキャリアを通して最も重要な作品となった。
オープニングトラックの「THE WORLD」のフィードバックノイズから幕を開ける今作は、
前半パートは非常に強烈なハードコアパートで占められている。
カワノが絞り出す絶叫はここにきて臨界点を迎えており、メンバーの演奏は緊張感のあまり鋭い。
下らない絶望的な社会を下品に揶揄する「光倶楽部」や、人の心を踏み躙る宗教家気取りを痛烈に嘲笑う「豚」、
歌うことの虚しさや人の優しさと想いの無力さを儚みながら絶望のままに死ぬことを叫び切る「葬唱」など、
歌詞、サウンド共に容赦無くリスナーの心を抉る楽曲が連打されていく。
後半にさしかかると歌が旋律と柔らかさを取り戻すかの如く弾け、サウンドも激情を振り撒いていく。
親愛の極地とも言えるラブソング「ウソでも「ウン」て言いなよね」、人や世界を信じることを諦めないでいてほしいと叫ぶ「天国」、
スティーブ・アルビニのコールからはじまり、人々の生きる世界を「別にいい」と優しさをもって諦念し、肯定する「人々よ」が
少しずつ心を解きほぐすように並べられていく。
ラストナンバーのシカゴ版「世界」はより生々しく、より深刻に、なによりもより研ぎ澄まされた形で最後の姿を見せており、
メンバー四人の振りまく激情がないまぜになったインプロヴィゼーションパートを経て、
カワノの魂ごと差し出すかのような絶叫とバンドサウンドの濁流で締め括られる。
今作のリリース後、CRYAMYは実に久々の全国大規模ツアーを実施。
その後、特別な単独公演として開催された東京・日比谷野外大音楽堂は座席・立見共にチケットが完売。
つめかけた3000人超のオーディエンスに鳴らされたのは、3時間半の彼らの集大成のライブであり、
この日の公演はCRYAMYの歴史上、最も重要で、最も最高のライブとなった。
このライブをもって、長年バンドを牽引したボーカル・カワノがCRYAMYを脱退。
彼の在籍した最後のアルバムでもあり、CRYAMYの第一章が終わりを迎えたアルバムともなってしまった。